アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 アトピー性皮膚炎とは

 アトピー性皮膚炎は、原因も症状もひとつではありません

ポイント

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある皮膚の炎症が体の一部あるいは全身に現れ、良くなったり、悪くなったりしながら、慢性的に続く病気です。体のどこに症状が出るかは一定ではなく、顔や首、上腕、手などに起こりやすいものの、その範囲や重症度は様々です。顔にしか出ない、という人もいれば、体の隅々にまで炎症が広がる人もいます。その違いの理由は、実はまだよくわかっていません。以前は、もともとアレルギーの体質を持っている人に、ダニやカビ、ハウスダスト、花粉などのアレルギー要因の刺激が加わったために、皮膚に反応が出る病気だと考えられていました。ところが、研究が進んで病気のメカニズムが明らかになってくると、アトピーの患者さんは、アレルギー体質とは別に、皮膚が乾燥し、バリア機能が低下して炎症が起きやすい体質も重要な要因であることがわかってきました。つまり、アトピーは、「持って生まれたアレルギー体質」とアレルギーとは別の「皮膚のバリア機能が低下する体質」とが重なり合って病気なのです。

乾燥した皮膚はアトピー特有のかゆみを引き起こしやすく、かいてしまうと皮膚のバリア機能はますますこわれ、ダニや花粉などの刺激が簡単に皮膚の内部まで侵入します。アトピーの患者さんは、その無防備な状態でたくさんのアレルギー要因に囲まれて暮らしているのです。生活環境は、アトピーを悪化させている要因として大いに見直すべきです。一見、清潔で温度調節の行きとどいた住まいは、換気が悪く、ダニが住みついてカどの生えやすい環境です。カンジダなど、体についているカビが悪化要因のひとつになることもあります。イヌやネコ、ハムスターなどの小動物にアレルギー反応を起こす人もいます。また、汗をかくことや精神的なストレスも、アトピーの症状を悪化させます。子どもの場合は、まれですが特定の食べものが悪化要因になることもあります。しかし、いくつもの要因が複雑に絡み合っているため、検査をしても犯人を特定することはむずかしく、仮に特定できたとしても、それを完全に取り除けない場合が多いことも、アトピーを治りにくいむずかしい病気にしています。ネット、本、テレビ、世間のうわさなど、さまざまなメディアによって、アトピー性皮膚炎に関する治療法や体験談などさまざまな情報が伝えられていますが、その中には、間違った情報も多く含まれており、治療法に悩む患者さんも少なくありません。また、アトピー性皮膚炎が慢性疾患であることを十分に理解していないために、科学的根拠のない治療法に期待して、症状を悪化させてしまうこともよくあります。

アトピー性皮膚炎の症状